バックテストでよい結果がでたからといって、その手法が有効だと簡単に信じていないでしょうか?
ファンダメンタルにせよテクニカルにせよ、その手法に有効性があるからリターンがでるのであって、リターンがでるから有効だというわけではありません。
前回の記事でリターンは3つの要素に分解できることを説明しました。
リターンの要素は①手法の予測能力、②手法のポジションバイアス、③検証期間のネットトレンドでしたね。
バックテストをする際には、ポジションバイアスとネットトレンドを取り除いて、手法の予測能力を検出する必要があります。
さて、この記事では正しい仮説の立て方をご紹介します。
目次
間違った仮説の立て方
あなたが新しい投資手法を思いついたとしましょう。
あなたはきっと「過去のデータを入手してバックテストをしよう!バックテストでよいリターンがでるようなら実際に投資してみようかな?」と考えるはずです。
それ、本当に大丈夫ですか?
え?ポジションバイアスとネットトレンドは除去したから大丈夫?
いえいえ、それだけではないのです。
ファンダメンタルにせよテクニカルにせよ、その手法に有効性があるからリターンがでるのであって、リターンがでるから有効だというわけではありません。
どういうことでしょうか。
例えば、①「AならばB」という場合に、「Aである」ならば、結論は「Bである」となります。
では、②「AならばB」という場合に、結論が「Bである」ならば、それは「Aである」といえるでしょうか?
わかりにくいので簡単な例で試してみましょう。
例えば、①「0をかけると0になる」という場合に、「0をかける」ならば、計算結果は「0になる」となります。
ここまではOKですね?
では、②「0をかけると0になる」という場合に、計算結果が「0になる」ならば、とった手段は「0をかける」だといえるでしょうか?
いいえ、そうではありませんね。
計算結果が「0になる」場合は他にもあります。
例えば元の数字が2なら2を引けば計算結果は「0になる」ですよね?
この場合、結論から手段はわからない(結論が「Bである」場合でも「Aである」とはいえない)ということです。
つまり、「(B)リターンがでる」という結論からは、「(A)手法は有効である」とはいえないということです。
正しい仮説の立て方
(B)バックテストでリターンがでても(A)予測能力はわからない。
これでは困ってしまいますね。
(B)から(A)を導き出す方法はないのでしょうか?
実は、(B)を否定することで(A)でないことを証明することはできます。
例えば、③「AならばB」という場合に、結論が「Bでない」となれば、「Aではない」となります。
わかりにくいですね。簡単な例で試してみましょう。
③「0をかけると0になる」という場合に、計算結果が「0ではない」となれば、取った手段が「0をかけるではない」ことがわかります。
この場合、結論から(特定の)手段(でないこと)がわかるということです。
つまり、バックテストをする場合には結論を否定することができれば手法の予測能力があるかどうかわかります。
まだわかりにくいですね。
具体的には「この手法に予測能力はないのでバックテスト*のリターンは0になる」と仮定を立てます。(*ポジションバイアスとネットトレンドを除去した場合)
「リターンが0になる」という結論を否定する結果、つまり「リターンは0でない」となれば、「この手法に予測能力がない」の部分を否定できる、つまり「この手法に予測能力がある」といえるというわけです。
ちょっと複雑なので表にまとめてみました。
例題1:妥当 | 例題1:不当 | |
①前件節Aの肯定 | 前件節Aの否定 | |
仮説 | AならばB | AならばB |
結果 | Aである | Aではない |
結論 | Bである | Bではない |
例題1:妥当 | 例題1:不当 | |
③後件節Bの否定 | ②後件節Bの肯定 | |
仮説 | AならばB | AならばB |
結果 | Bではない | Bである |
結論 | Aではない | Aである |
例題2:妥当 | 例題2:不当 | |
①前件節の肯定 | 前件節の否定 | |
仮説 | 有効ならばリターンは0でない | 有効ならばリターンは0でない |
結果 | 有効である | 有効でない |
結論 | リターンは0ではない | リターンは0 |
例題2:妥当 | 例題2:不当 | |
③後件節の否定 | ②後件節の肯定 | |
仮説 | 有効ならばリターンは0でない | 有効ならばリターンは0でない |
結果 | リターンは0 | リターンは0でない |
結論 | 有効でない | 有効である |
例題3:妥当 | ||
③後件節の否定 | ||
仮説 | 無効ならばリターンは0 | |
結果 | リターンは0でない | |
結論 | 無効ではない |
まとめ
精一杯わかりやすく説明したつもりですが、まだわかりにくいかもしれませんね。
ポイントをまとめておきますね。
- バックテストの際に、ポジションバイアスとネットトレンドを除去する(前回のおさらい)
- 「テストする手法に予測能力はないので、バックテストでのリターンは0になる」と仮説を立てる
- 先の2つの条件を満たしたうえで、仮説を否定(つまりバックテストでのリターンが0でなければ)その手法は有効といえる
あとはブートストラップ法、モンテカルロ・パーミュテーション法が使えれば、「予測能力がないのにたまたまリターンがでてしまった手法」を除去できますので、統計的にも有意な手法を探すことができます。