僕のバックテストは意味がない。(僕の検証は統計的に意味のある検証ではない。)
過去に行った、絶対モメンタム、デュアルモメンタム、加速デュアルモメンタム、移動平均線、最小分散の検証に至ってもそうだろう。
だって5000回もモンテカルロ・パーミュテーション法で検証とかそんなん無理やん…。
目次
テクニカル分析の迷信――行動ファイナンスと統計学を活用した科学的アプローチ
「テクニカル分析の迷信――行動ファイナンスと統計学を活用した科学的アプローチ」を読みました。
統計についてキチンと勉強したことがなかったのでかなりヘビーでした。
なんせ長い。
テクニカル分析の結果部分は本の最後に少しだけ、統計とバイアスについての説明が本書の大半を占めています。
絶対全部理解できてないので詳しくは書かない(書けない…)ですが、これからテクニカル分析(あるいはバックテストなどの検証)をされる方は絶対にご一読いただきたい内容です。
(すでにご自身で手法を確立されている方は読む必要ないと思います。)
本書は邦題こそ「テクニカル分析の迷信」と、テクニカル分析はマヤカシだ!と主張しているように見えますが決してそうではありません。
著者はテクニカル分析の有効性を信じるからこそ、6000を超える手法に対して統計的仮説検定を行っています。
そして著者は「6402のルールのうち少なくとも2~3は有意なルールがあるものと信じてこうしたのだが、残念ながら私の思惑は外れたようである。」と述べています。
ネタばれしてしまいましたが、著者の調査した範囲のなかでは統計的に有意なテクニカル分析の手法というものは残念ながら1つもなかったようです。
テクニカル分析は迷信なのか
ではテクニカル分析はやはり迷信なのでしょうか?
書籍やブログで紹介されている大多数のテクニカル分析は迷信である可能性が高いと思います。
ただし、「すべて迷信」というのは言い過ぎではないかと思います。
著者によるとテクニカル分析には2つあります。
「客観的テクニカル分析」と「主観的テクニカル分析」です。
客観的テクニカル分析は、定量的に再現ができるもの、つまりプログラムで再現でき、正確なパフォーマンスの計測ができるものです。
主観的テクニカル分析は、定量的に再現ができないもの、こちらはプログラミングができないため、正確なパフォーマンスは計測できません。(本書では主観的テクニカル分析は「内容のない主張」と厳しい口調で述べられています。)
本書で検証されているのはすべて単一ルールの客観的テクニカル分析です。
複数のルールを組み合わせた場合の客観的テクニカル分析は検証がされていません。
また、主観テクニカル分析で結果を残している投資家・投機家の方々はいますよね?
彼らは運がいいだけなのかもしれませんが、第六感のようなもので僕にはみえない「ナニか」がみえている可能性があります。
なので複数のルールを組み合わせたなかに統計的に有意な手法が隠れている可能性や、定量的に再現はできない「ナニか」を利用した手法が存在する可能性はあります。(もちろん存在しない可能性もありますが。)
再現できなければ意味はない
仮に統計的に有意な手法が存在したとして、それが再現できなければ(僕のようにナニかが見えない投資家にとっては)意味はありません。
結局のところ僕たち普通の投資家は、モメンタムやバリューといった存在が確認されているファクターを利用して投資するか、インデックスに投資するのがベターな選択ということになりそうです。
さて、なんの面白みもない結論になってしまいました。
せっかくなので本書で学んだことをご紹介しましょう。
バックテストに役立つ知識
テクニカル手法のパフォーマンスは3つの要素に分解できます。
①手法の予測能力、②手法のポジションバイアス、③検証期間のネットトレンドです。
①手法の予測能力は、その手法を採用することで得られるリターンです。
②ポジションバイアスは、その手法が買いポジションを取りやすい手法なのか、売りポジションを取りやすい手法なのかということです。
例えば、サイコロを振って1~4の目が出たら「買い」、5,6の目が出たら「売り」とい手う法の場合、「買い」が出やすくなるので、買いポジションにバイアスがあるということになります。
③ネットトレンドは、検証期間中のマーケットの1日の平均価格変動です。
平均価格変動がプラスの場合は上昇トレンド、マイナスの場合は下落トレンドということになります。
もし、②ポジションバイアスがあったり、③ネットトレンドがゼロ以外の場合には手法の予測能力を正確に測ることはできません。
仮に検証で得られたパフォーマンスが+3%だったとしてもこれを分解すると、①によるリターン=0%、②によるリターン=+5%、③によるリターン=ー2%、ということが考えられるからです。
つまり、テクニカル手法を検証する場合には、ポジションバイアスをなくす、ネットトレンドを除去するという準備が必要になるということです。
ポジションバイアスとネットトレンドの影響
あれ?
上昇トレンドのときに買いポジションバイアスのあるテクニカル手法は…?
予測能力があるといえるのでは…?
残念ながらそうではありません。
ネットトレンド+10%の上昇トレンドの期間に、サイコロを振った目で検証する場合で考えてみましょう。
サイコロを振るだけなので予測能力なんてあるわけないですよね?
つまり予測能力はゼロです。
№ | 買い | 売り | 予測能力 | ネットトレンド | 買いポジションバイアス | 売りポジションバイアス | 期待 リターン |
① | 1,2,3,4 | 5,6 | 0.0% | 10.0% | 6.7% | 3.3% | ????? |
② | 3,4,5,6 | 1,2 | 0.0% | 10.0% | 6.7% | 3.3% | ????? |
③ | 1,2,3 | 4,5,6 | 0.0% | 10.0% | 5.0% | 5.0% | ????? |
④ | 1,2,3,4,5,6 | – | 0.0% | 10.0% | 10.0% | 0.0% | ????? |
手法①と②は買いポジションの目が4つ、③は3つです。
①と②は買いポジションをとる目が違いますが、出やすさは同じですので同じだけのポジションバイアスがあります。
③は買いと売りの出やすさが同じなのでポジションバイアスはありません。(つまり0%です。)
④はすべての目で買い、つまりバイ&ホールドです。
ちなにみポジションバイアスの計算方法は以下のとおりです。
- ポジションバイアス=ポジションをとる確率×ネットトレンド
さて、1万回サイコロを振ってみたとしましょう。
№ | 買い | 売り | 予測能力 | ネットトレンド | 買いポジションバイアス | 売りポジションバイアス | 期待 リターン |
① | 1,2,3,4 | 5,6 | 0.0% | 10.0% | 6.7% | 3.3% | 3.3% |
② | 3,4,5,6 | 1,2 | 0.0% | 10.0% | 6.7% | 3.3% | 3.3% |
③ | 1,2,3 | 4,5,6 | 0.0% | 10.0% | 5.0% | 5.0% | 0.0% |
④ | 1,2,3,4,5,6 | – | 0.0% | 10.0% | 10.0% | 0.0% | 10.0% |
ちなみに期待リターンの計算方法は以下のとおりです。
- 期待リターン=(買いポジションバイアス)-(売りポジションバイアス)
予測能力がゼロですから、買いポジションをとる目が変わっても同じ期待リターンになります。
仮に、手法①にプラスの予測能力があった場合、検証後の期待リターンが手法②より大きくなります。
その場合、手法①の予測能力は以下の方法で計算できます。
- 手法①の予測能力=(手法①の期待リターン)-(手法②の期待リターン)
つまり、予測能力の有無については、ポジションバイアスが同じ手法を比較すればわかるということです。
まとめ
さて、小難しく長々と書いてきましたがまとめます。
- 統計的に有意なテクニカル分析はみつけられなかった
- 結局のところファクターを利用するか、インデックス投資がベター
- バックテストするならポジションバイアスとネットトレンドも調べる必要がある
- ポジションバイアス=ポジションをとる確率×ネットトレンド
- 期待リターン=(買いポジションバイアス)-(売りポジションバイアス)
- 予測能力の有無については、ポジションバイアスが同じ手法を比較することで調べられる
この他、ブートストラップ法やモンテカルロ・パーミュテーション法、仮説検定の考え方など、書きたいことはたくさんあるのですが…ちょっとしんどいので今日はここまで。
すごく勉強になるので是非ご一読ください。
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