いろいろと記事にしたいことはあるのですが、Accelerating Dual Momentumが気になったので少し調べてみました。
目次
Accelerating Dual Momentumとは
Accelerating Dual Momentumとはなんでしょうか?
TwitterでQDMさんが紹介していたものですが、モメンタム投資の一種のようです。
デュアルモメンタムについて調べていたら、"Accelerating Dual Momentum"(加速デュアルモメンタム) というのを見つけた。 https://t.co/SXtO1gvStX
— QDM (@9steps) April 19, 2019
具体的にはS&P 500と小型株を対象として、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月のモメンタムを計測し、負のモメンタムでなければモメンタムの大きなほうを、どちらも負のモメンタムの場合には長期債を保有します。
デュアルモメンタムの亜種のような存在かと思いますが、モメンタムの計測期間が異なるほかに、負のモメンタムの場合に保有する資産が短期債でないところも大きな違いかと思います。
ネットで拾った画像ですが、図にするとこんな感じです。

オリジナルとの比較
オリジナルのDual Momentumと投資対象が異なりますが、一先ず並べて比べてみました。
バックテストに使用したのは以下の投資信託です。
- VFINX(青:S&P 500)
- VINEX(橙:米国以外の小型株)
- VUSTX(ピンク:長期債*)
- VBMFX(薄緑:短期債)
*一般的にデュレーションが5年以上の債券が「長期債」とされています。VUSTXはデュレーション17年の”超”長期債という扱いかと思いますが、今回はITバブルとリーマンショックを含むなるべく長い期間のバックテストを行う為に採用しました。
オリジナルのDual Momentum(赤:ODM)は、VFINXとVINEXの12ヶ月のモメンタムを比較し、どちらも負の場合はVBMFXを保有します。
Accelerating Dual Momentum(緑:ADM)は、VFINXとVINEXの1,3,6ヶ月のモメンタムを計測し比較、どちらも負の場合にはVUSTXを保有します。

どちらもVFINXにも、VINEXにも勝っているのですが、Accelerating Dual Momentumはオリジナルが苦戦した2010年代にもVFINXを上回っている(手数料、税金を考慮するとVFINXを下回る可能性がありますが)のが特徴的かと思います。
ちなみに2010年~2019年4月までだとこんな感じです。
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なお、VINEXが1997年以降のデータなのでPortfolio Visualizerでは1998年からのバックテストしかできませんでしたが、150年遡ったバックテストの結果でもオリジナルを上回ったそうです。
ただし、私の確定拠出年金ではS&P 500も小型株も使えませんので、別の方法を考える必要があります。
S&P 500と小型株の代替案
私の確定拠出年金で使用できるのは以下の投資信託になります。
- 野村DC国内株式インデックスファンド・TOPIX
- 野村DC外国株式インデックスファンド・MSCI-KOKUSAI
- 野村新興国株式インデックスファンド(確定拠出年金向け)
- 野村DC外国債券インデックスファンド
1~3は現在デュアルモメンタムで使用している投資信託です。
S&P 500(VFINX)に相当するものはありませんので、引き続きMSCI-KOKUSAIをベースにすることになります。
さて、小型株の代わりに何を採用するか?というところですが、TOPIXか新興国のどちらがよいでしょうか?
どちらを採用しても良いとは思うのですが、より広く分散するという意味で今回は新興国を採用してみようと思います。
では、避難先はどうしましょうか?
4の野村DC外国債券インデックスファンドに関しては、デュアルモメンタムでも採用を検討しました。
しかしデュレーションが7年程度とデュアルモメンタムで使用する避難先である「短期債」には適さないという判断で使用を見送った投資信託です。
というわけで現在私はデュアルモメンタムの避難先として現金を採用していますが、Accelerating Dual Momentumでは避難先として長期債を使用しますので、現金ではなく野村DC外国債券インデックスファンドを採用できそうです。
新興国を使ってのバックテスト
さて小型株の代わりに新興国株を採用することにしたわけですが、野村DC外国株式インデックスファンド・MSCI-KOKUSAIと野村DC外国債券インデックスファンドではITバブルとリーマンショックを含む期間のバックテストができません。
というわけでVFINX、VEIEX、VUSTXを使ってバックテストしてみました。
- Dual Momentum(赤:VFINX, VEIEX, VBMFX)
- Accelerating Dual Momentum(緑:VFINX, VEIEX, VUSTX)
- VFINX Buy and Hold(青:S&P 500)
- VEIEX Buy and Hold(紫:新興国)
- VUSTX Buy and Hold(ピンク:長期債*)

Dual MomentumもAccelerating Dual Momentumも、ITバブルとリーマンショックを上手く回避しているようにみえますし、リーマンショックまでは同じくらいのパフォーマンスですね。
ちなみに2010年~2019年4月までだとこんな感じです。
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2019年)
Dual Momentumが苦戦(S&P 500にボロ負け)したリーマンショック以降でも、Accelerating Dual MomentumはS&P 500に迫るパフォーマンスでした。
新興国株というとボラリティが大きなイメージですが、モメンタムを利用した戦略に採用するのに問題はなさそうですね。
実際の運用に近いバックテスト
新興国を採用することは問題なさそうでしたので、実際の運用に近いバックテストをしてみました。
- Dual Momentum(赤:TOK, VWO, CASH)
- Accelerating Dual Momentum(緑:TOK, VWO, IEF)
- TOK Buy and Hold(青:MSCI-KOKUSAI)
- VWO Buy and Hold(紫:新興国)
- IEF Buy and Hold(ピンク:7-10y 長期債)
- CASH Buy and Hold(橙:CASHX)

2009年以降でしかバックテストができませんが、先程の新興国をつかってのバックテストと同じような形のグラフになりましたね。
MSCI-KOKUSAIがベースになる以上、S&P 500を使用した場合よりパフォーマンスが劣ることが予想されますが、2009年以前のパフォーマンスも似たようなかたちになるのではないでしょうか?
まとめ
ここまでDual MomentumとAccelerating Dual Momentumを比較してみてきましたが、モメンタム投資を採用するうえで私が一番重視したいことは「暴落を回避できるかどうか」です。
どれだけよいパフォーマンスを残しても最後にゼロをかけるとゼロになってしまいます。
大前提として暴落が回避できること、そのうえでよいパフォーマンスを残せることが採用の基準になるのではないでしょうか。
Accelerating Dual Momentumはここ10年くらいの相場に対して過剰適合している可能性があります。
それでもITバブルとリーマンショックという2回の暴落を回避し、そのうえでモメンタム投資が不調だった期間にもよいパフォーマンスを残しました。
私はAccelerating Dual Momentumは採用に値する戦略だと思いますので、次回のモメンタム判定(5月15日)から、野村DC外国株式インデックスファンド・MSCI-KOKUSAI、野村新興国株式インデックスファンド(確定拠出年金向け)、野村DC外国債券インデックスファンドを利用したAccelerating Dual Momentumを採用してみようと思っています。
QDMさん、Accelerating Dual Momentumという素晴らしいアイデアを教えていただきましてありがとうございました!
※投資は自己責任です。